空気式パラレルマニピュレータを用いた手首リハビリ支援装置の開発

 研究目的 
 近年の理学療法士の絶対数不足に対して,ロボット技術の導入が望まれている。本研究ではコンパクトな構造ながら多自由度な特性を有するパラレルマニピュレータに着目し,手首のリハビリ支援装置へ応用する。

 研究の概要 
 
Fig.1 ideal rehabilitation system
Fig.1は本研究で目指す理想的なリハビリシステムである。理学療法士(P.T.)と患者(Patient)の間にロボットが介在している。図中の各機能A〜Fは以下となる。
  1. P.T.の徒手訓練動作をロボットにより獲得
  2. ロボットによる徒手訓練動作の実行
  3. 患者の特性をロボットにより定量的に評価
  4. 患者の手首特性をP.T.に呈示
  5. 患者の手首特性を患者自身に呈示
  6. 測定した手首特性に基づく訓練動作の生成

Fig.2 Wrist bon 
 
Fig.3 Pneumatic
parallel manipulator
 Fig.2は手首の関節骨を表す。手首のリハビリでは関節骨同士の摩擦を避けるため,腕の軸方向へ常に引っ張り力を与えた状態で関節にモーメントを与えるという多自由度な動作が要求される。
Fig.3はリハビリ支援ロボットとして導入する空気式パラレルマニピュレータである。本マニピュレータの特徴は以下のとおりである。


  • 机上に置いて使用できるほどコンパクト(在宅リハビリにも適用可)
  • 多自由度(6自由度)を駆動できる(手首の複雑なリハビリ動作にも対応可)
  • 空気の圧縮性に起因する低剛性特性が安全性として機能 
 Movie(wmv)
 これまでの研究内容(1) 
 
Fig.4 OpemGL を用いた
手首特性の表示
 これまで,Fig.1のBに相当する機能として,インピーダンス制御系をマニピュレータに実施し,基本的なリハビリ動作である

  • 等速運動
  • 等張運動
  • 等尺運動

が多軸方向同時に実行できることを確認してきた。さらに,Fig.1のD,Eの機能として,Fig.4.に示すように,患者の手首の機械特性を実時間で同定し,それを直感的に呈示するためにOpenGLを用いてグラフィカルに呈示する手法を提案してきた。
  これまでの研究内容(2)

Fig.5 実際の徒手訓練の
様子(手前がP.T.)

Fig.6 ロボットを介在とした
徒手訓練の様子
 Fig.1のA,Bの機能として,理学療法士が患者に対して施している徒手訓練動作を,訓練時にロボットを介在させることでロボットに徒手訓練動作を獲得させ,その後,獲得した訓練動作を患者に実行する手法を提案した。
Fig.5.は実際の徒手訓練の様子である。P.T.は親指で患者の手根骨の位置を確認しながら行う。
Fig.6.はロボットを介在とした徒手訓練動作の様子である。P.T.はFig.5と同等の状態で訓練を実行できるようにジグを工夫し,ロボットにはそのダイナミクスが低減される仕組みを構築している。
  Movie(wmv)
  現在の研究内容


Fig.7 筋電に基づくリハビリ
 従来のリハビリ訓練は,手首部のトルクと手首関節角度(角速度)の間に負荷を設定した手法が一般的である。手首の運動は上腕部の筋肉の拮抗動作により実現されている。そのため,本研究では,上腕部の筋肉に直接負荷を設定する訓練手法を提案する。
Fig.7に示すように,訓練したい筋肉の大きさを筋電位センサで測定し,それをロボットにフィードバックすることで筋肉に直接負荷をかけた訓練が実施できる。
また,疲労に伴い,筋電位信号の平均周波数が低周波数域に移行することが広く知られており,訓練動作と平行して筋電位信号をリアルタイムに周波数解析を行うことで,疲労度に基づいた訓練メニューの調整機能を実現する。
  Movie(YouTube) 第23回フルードパワー国際見本市IFPEX 2011(2011.7.20-22)にて

 関連文献
 
  • Masahiro Takaiwa,Toshiro Noritsugu,Norimichi Ito,Daisuke Sasaki, Wrist rehabilitation device using pneumatic parallel Manipulator based on EMG singnal, International Journal of Automation Technology, vol.5, no.4, pp.472-477 2011.7.5
  • Masahiro Takaiwa, Toshiro Noritsugu, Daisuke Sasaki, Wrist rehabilitation using pneumatic parallel manipulator -EMG based training and fatigue evaluation, Proc. of 11th International Conference on Fluid Control, Measurements, and Visualization 2011.12.9
  • 高岩昌弘,則次俊郎,正子洋二,佐々木大輔,空気式パラレルマニピュレータを用いた手首部リハビリテーション支援装置の開発−療法士の徒手訓練動作の獲得と手首特性の多自由度計測−, 日本ロボット学会誌,vol.25 No.8,pp.1251-1258,2007
  • 高岩昌弘,則次俊郎,日本ロボット学会誌,空気式パラレルマニピュレータを用いた手首部リハビリテーション支援装置の開発−多自由度リハビリ動作の実現−, 24巻6号,747頁-753頁,2006年
  • Masahiro Takaiwa, Toshiro Noritsugu, Development of Wrist Rehabilitation Equipment Using Pneumatic Parallel Manipulator, Proc. of the 2005 IEEE International Conference on Robotics and Automation ICRA, pp.2313-2318 2005